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2026年ノーベル化学賞に硤合憲三さん:生命の「利き手」の謎に挑んだ「硤合反応」とは

2026年ノーベル化学賞に硤合憲三さん:生命の「利き手」の謎に挑んだ「硤合反応」とは ノーベル化学賞 2026 硤合憲三 東京理科大学 キラリティー 不斉自己触媒 日本人受賞 2026年ノーベル化学賞に硤合憲三さん:生命の「利き手」の謎に挑んだ「硤合反応」とは 公開日:2026年10月10日 この記事でわかること 2026年ノーベル化学賞を受賞した硤合憲三さん(東京理科大学 名誉教授)とアンリ・カガンさんの研究内容 「鏡に映した分子」とは何か。なぜ生命は片方だけを使うのか、なぜ薬づくりで大事なのか 偶然生まれたわずかな差が、自分で増えて全体を支配する「硤合反応」のしくみ 2026年10月7日、ノーベル化学賞が発表され、 東京理科大学 名誉教授の硤合憲三(そあい・けんそう)さん と、フランスのアンリ・B・カガンさんの2人が選ばれました。授賞理由は「不斉有機合成における非線形効果と自己触媒の発見」。難しそうな言葉ですが、中身は 「生命の分子は、なぜ鏡に映した2種類のうち片方だけなのか」 という、100年以上続いてきた化学の謎への答えです。 受賞者プロフィール 氏名 経歴 硤合 憲三 (Kenso Soai) 1950年 広島県生まれ。1979年 東京大学で博士号。東京理科大学 名誉教授 アンリ・B・カガン (Henri B. Kagan) 1930年 フランス生まれ。1960年 コレージュ・ド・フランスで博士号。パリ南大学 名誉教授 出典:ノーベル財団の発表。賞金1,200万スウェーデン・クローナを2人で等分します。 同じ週に発表された医学賞(光遺伝学)と物理学賞(南極のIceCube)については、 「2026年ノーベル賞を読み解く:光遺伝学と南極IceCube」 で解説しています。 1. 「鏡に映した分子」と生命の利き手 ■ 右手と左手のような分子 右手と左手は形がそっくりですが、重ね合わせることはできません。鏡に映すと、ちょうど入れ替わります。分子にも、これと同じように 鏡に映した関係の2種類 がある物があります。化学ではこの性質を「キラリティー」(ギリシャ語の「手」に由来)と呼びます。 不思...

2026年ノーベル賞を読み解く:光遺伝学と南極IceCube
「光」と「幽霊粒子」が拓いた脳科学と宇宙

2026年ノーベル賞を読み解く:光遺伝学と南極IceCube「光」と「幽霊粒子」が拓いた脳科学と宇宙 ノーベル賞 2026 光遺伝学 ニュートリノ IceCube 脳科学 宇宙物理 2026年ノーベル賞を読み解く:光遺伝学と南極IceCube 「光」と「幽霊粒子」が拓いた脳科学と宇宙 公開日:2026年10月9日 この記事でわかること 2026年のノーベル生理学・医学賞「光遺伝学」とは何か。光で脳の神経細胞を操る仕組み ノーベル物理学賞「IceCube」とは何か。南極の氷で宇宙から来るニュートリノをとらえる仕組み 2つの受賞に共通する「新しい道具が学問を変えた」という物語と、日本とのつながり 2026年10月5日にノーベル生理学・医学賞、6日に物理学賞が発表されました。医学賞は、光で神経細胞のスイッチを入れたり切ったりできる「光遺伝学」を生んだ3人の研究者に、物理学賞は、南極の氷を巨大な観測装置に変えて宇宙のニュートリノをとらえた研究者に贈られます。 分野はまったく違いますが、2つの受賞には共通点があります。どちらも、それまで見えなかったものを見る(あるいは操る) 新しい道具 をつくったこと。そして、その道具が完成するまでに、 十年単位の試行錯誤 があったことです。 賞 受賞者 授賞理由(要約) 生理学・医学賞 (10月5日発表) カール・ダイセロス(米スタンフォード大学) ペーター・ヘーゲマン(独ベルリン・フンボルト大学) ゲオルク・ナーゲル(独ヴュルツブルク大学) 光で開くイオンチャネルの発見と光遺伝学 物理学賞 (10月6日発表) フランシス・ハルツェン(米ウィスコンシン大学マディソン校) IceCubeニュートリノ天文台への決定的な貢献と、宇宙から来る高エネルギーニュートリノの発見 1. 医学賞:藻類のタンパク質が「脳のスイッチ」になった ■ 脳の地図は「ぼやけた写真」だった 人の脳には約900億個の神経細胞があり、それぞれが何千もの細胞とつながっています。20世紀の研究で「脳のどの領域がどの働きに関わるか」はわかってきましたが、 特定の種類の神経細胞が、特定の感情や行動を直接引き起こしている ...

光合成は量子力学を使っている?量子生物学の最新研究と人工光合成への応用【2026年版】

光合成は量子力学を使っている?量子生物学の最新研究と人工光合成への応用【2026年版】 光合成は量子力学を使っている?量子生物学の最新研究と人工光合成への応用【2026年版】 この記事でわかること 「暖かく湿った生き物の体の中では量子効果は起きない」という常識が、どこまで崩れたか 光合成の「量子コヒーレンス」騒動:2007年の発見と、その後の検証 ノイズがエネルギーの流れを助ける仕組み(アンダーソン局在・量子ウォーク) 鳥の磁気コンパス、酵素、DNAの突然変異にひそむ量子効果 人工光合成と、量子収率130%を出した「シングレットフィッション」 話の確かさを、次の印で示しています。 確立 教科書レベル  査読済み 論文で発表、検証はこれから  未査読 発表のみ  仮説 未検証 1. 量子生物学とは:「生き物の中では量子は無理」という常識 量子力学の不思議な性質(重ね合わせ、トンネル効果など)は、とても繊細です。周りの分子がぶつかるとすぐに壊れてしまうため、実験では極低温や真空が使われます。そのため長い間、「 暖かく、湿っていて、ごちゃごちゃした生き物の体の中で、量子効果が役に立つはずがない 」と考えられてきました。 この常識に挑むのが 量子生物学 です。生き物が、量子の性質を「たまたま」ではなく「うまく利用して」いる例があるのではないか。その代表として注目されたのが、光合成でした。 2. 光合成と量子コヒーレンス:発見と検証の20年 植物や細菌は、光を受け取る「アンテナ」の色素から、化学反応を起こす「反応中心」まで、光のエネルギーをほとんど無駄なく運びます。その通り道のひとつが、緑色硫黄細菌の FMO複合体 というタンパク質です。いくつもの色素分子が並んだ、エネルギーの中継所です。 2007年:「光合成は量子の波で最短経路を探している」 米カリフォルニア大学バークレー校のフレミングらは、FMO複合体で 量子ビート (量子の波が干渉して生じる振動)が長く続く様子を観測しました(Nature, 2007)。「エネルギーは波のように すべての経路を同時に試し 、最も効率的な道を選んでいる」という説明は、大きな話題になりました。ただし測定は −196℃(77 K) で行...

ペンギン崩壊とは?素粒子の「標準模型」にひびを探す最前線【2026年版】

ペンギン崩壊とは?素粒子の「標準模型」にひびを探す最前線【2026年版】 ペンギン崩壊とは?素粒子の「標準模型」にひびを探す最前線【2026年版】 この記事でわかること 宇宙の95%が「まだわからないもの」でできている、という意味 素粒子の標準模型(17種類の粒子と4つの力)と、その足りないところ 重ね合わせ・量子もつれ・仮想粒子・量子ループを、やさしく 「ペンギン崩壊」とは何か、なぜ新しい物理の窓になるのか 2026年時点で、どの「ずれ」が消え、どの「ずれ」が残っているのか 前半は専門知識なしで読めるように、後半は実験の数字まで踏み込みます。各項目には、話の確かさを次の印で付けました。 確立 教科書レベル  査読済み 論文で発表、検証はこれから  未査読 発表のみ  仮説 未検証 1. 宇宙の95%は「正体不明」 星も、地球も、私たちの体も、原子でできています。ところが、宇宙全体のエネルギーを測ると、原子のような「普通の物質」はたった 約5% しかありません。 確立 ▼ 宇宙の中身(ESAの観測衛星プランクの結果) 27% 68% 普通の物質(星・地球・私たち) 4.9% 暗黒物質 26.8% 暗黒エネルギー 約68% 暗黒物質は「重力は及ぼすが光らない何か」、暗黒エネルギーは「宇宙の膨張を加速させている何か」。どちらも正体はわかっていません。 つまり、物理学がきちんと説明できているのは宇宙の20分の1だけです。残りを解き明かすには、今の理論の「外側」にある手がかりを見つける必要があります。この記事の主役「ペンギン崩壊」は、その手がかりを探す有力な場所のひとつです。 2. 素粒子の標準模型:17種類の粒子と4つの力 普通の物質と、それに働く力を説明する理論が 標準模型 です。1970年代に完成し、半世紀にわたってほぼすべての実験結果を正確に言い当ててきました。 確立 ▼ 素粒子の標準模型(17種類) 第1世代 第2世代 第3世代 軽い ←――――――――――――→ 重い 力を運ぶ (スピン1) +2/3 u アップ 2.16 MeV +2/3 c チャーム 1.27 GeV +2...

AIとは何か?10年の歴史と未来予測:初心者から技術者まで完全ガイド【2026年版】

AI入門 機械学習 ディープラーニング ニューラルネットワーク GPU・CUDA 生成AI AIエージェント 未来予測 AIとは何か?10年の歴史と未来予測 初心者から技術者まで完全ガイド【2026年版】 この記事でわかること AIの「仕組み」をゼロから理解できる ニューラルネットワークの構造・学習原理を図解で理解する なぜGPUがAIに欠かせないのか を技術的に把握する 2012〜2026年のAI重要事件を詳細に追う 2030〜2040年代にAIが社会をどう変えるか 「AIって難しそう…」と感じている方でも読み通せるよう、専門用語はその都度やさしく解説します。技術者向けには行列演算・バックプロパゲーション・GPU並列化まで踏み込んで解説します。 1. そもそも「AI(人工知能)」とは何か? AI(Artificial Intelligence/人工知能)とは、 「コンピュータに人間のような知的な作業をさせる技術の総称」 です。「考える」「学ぶ」「判断する」「会話する」といった人間特有の能力をコンピュータで再現しようとする研究・技術分野です。 ■ AI・機械学習・ディープラーニングの「入れ子」関係 この3つは混同されがちですが、概念の大きさが違います。下図のように 「AI の中に 機械学習、その中にディープラーニング、さらにその中に LLM(大規模言語モデル)」 という階層になっています。 ▼ AI / ML / DL / LLM の包含関係 🤖 AI(人工知能)― 知的作業をするコンピュータ技術の総称 📊 機械学習(ML)― データからパターンを自動学習 🧠 ディープラーニング(DL)― 多層ニューラルネットワークによる学習 💬 LLM(大規模言語モデル)― GPT・Claude・Gemini など 囲碁AIは「AI」だが「DL」ではなかった時代もある。現在のブームを牽引するのはほぼDL。 用語 一言で言うと 具体例 AI(人工知能) 知的作業をするコンピュータ技術全般 チェスAI、カーナビの経路探索 ...

農業の常識?

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  2025年新年のご挨拶 明けましておめでとうございます。昨年は、農業を含むさまざまな分野で、自分が「当たり前」「常識」と思っていたことが大きく揺らぎ、新たな視点を得る年でした。本文では、特に農業に関する話題に絞って、昨年を振り返りながら考察したいと思います。 文明の発展は産業革命以降、目を見張るものがありました。人類は知見を活かし、石炭や石油を使用し、不可能だと思われた事を現実にしてきたのです。農業の世界でも、化成肥料や農薬、除草剤などの技術で、主要な農業生産のパラダイムシフトを引き起こしました。特に「緑の革命」と呼ばれたらしいですが、非効率な従来の農業を捨てより科学的な手法を用いる事で農業の生産性を上げて、世界中の飢餓をある程度救ったのは事実でしょう。 しかし、これらの技術は地球環境への影響を考えると問題な点も多く、地球環境問題は急速に表面化しています。特に地球温暖化が大きな対象となっています。実は農業こそ環境破壊の元凶だと言われているのも最近の事実です。時代とともに今までの常識であった事柄から常にパラダイムシフトを起こし、もっといい未来を創造するべき時が来ています。 化成肥料と環境への影響 たとえば化成肥料は、ハーバーボッシュ法(ダイナマイトを製造する工程と同じ)という大量のエネルギーを要する制造法を通じて生産されます。これにより間接的にCO₂が大気中に放出され、また、土壌に散布された化成肥料が、過剰な窒素を 一酸化二窒素(N₂O) という有毒ガスの形態で放出されることが分かっています。 N₂O はCO ₂ よりも温暖化に与える影響が300倍高いと言われています。 また、国際研究プロジェクト 「 グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP) ※ 」 は、一酸化二窒素(N 2 O)の主要な発生源と吸収源を詳細に網羅した世界のN 2 O収支「世界の一酸化二窒素(N 2 O)収支2024」を公表しました。今回の報告では、最近40年間(1980年から2020年)において、世界の人為的N 2 O排出総量は約40%増加し、最も主要な人為排出源は農業活動であることが示されました。       <温室効果ガス>                 出典) 温室効果ガスインベントリオフィス            <一酸化二窒素ガスの生成>                 ...